Blog活動日誌

さよならは仮のことば

先日、大学時代の友人から一冊の本が送られてきた。
タイトルは「さよならは仮のことば」。詩人、谷川俊太郎さんの詩集だ。

実は学生時代に僕がいた人文学科は募集を止めた為、僕らは最後の人文学科となった。
僕はそれを記念したイベントを勝手に企画したところ大学側も面白がってくれた為、笠原芳光さんや、上野千鶴子さんに加えて谷川俊太郎さんにも来て頂くような素敵なイベントが出来上がった。

様々な講演、学生のダンスや映像のイベントなどを披露し、最終的にその様子を収めた冊子を作り、その年に卒業する人文学科生へ配ることになった。

冊子を作る前に、僕は講演に来ていた谷川俊太郎さんの懇親会で、とあるお願いをしていた。それは「人文学科に向けた別れの詩を書いて欲しい」というものだった。

谷川俊太郎さんは快く快諾してくださり…とはいかず、本当に仕事が立て込んでいるので難しいと思うと真摯に答えてくれた。

それからしばらくして、突然、大学の学生課に1枚のFAXが届いた。
そこに載っていたのが「さよならは仮のことば」だ。

学生課から電話をもらい、それを読み、震えたことを今でも覚えている。
言葉には、こんなにも気持ちを揺さぶる力があるのかと感動した。

詩を気に入った谷川さんは、しばらくして大学に自身の詩集に掲載しても良いかと許可を求めてきた。当然、止める理由など何もなかったが、まさかそれから数年の時を経て、本のタイトルにまでなっているとは思ってもみなかった。

先日、義母の一周忌が無事に終わり、そのタイミングで受け取った「さよならは仮のことば」は、大切な人が亡くなった時に、いまでも僕の胸で繰り返される。

マイク一本から発せられる言葉で、世の中を変えようとしている政治家は、1つの詩集で心を震わせる詩人を見習わないといけないなと痛感している。

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