2025年12月25日 県外調査 「支える農業」から見えた有機と技術の現実
こんにちは。滋賀県議会議員の野田武宏です。
環境農水常任委員会4か所目の視察先として、熊本県山都町の株式会社興農園さんでお話を伺いました。興農園さんは、種や苗を扱う会社としてスタートし、創業77年を迎えます。現在は約140名の社員を擁し、農業資材の卸売を主軸に、フィルム、種子、苗の供給に加え、ビニールハウスの施工管理やアフターフォロー、オーダーメイド加工、被覆作業の代行まで手がけておられます。いわば「作る農業」ではなく、「農業を支える側」に長く立ってきた企業だと感じました。
特に印象的だったのは、試験農場の位置づけです。世界中の品種を対象とした栽培試験や、新しい資材・栽培システムの検証、さらには石油を使わない資材の実証まで行い、そこで得られた知見を農家や視察者に提供されています。農業法人としても、高収益生産や流通形態の確立、働きやすい環境づくりを掲げ、採算の取れる経営モデルの構築に取り組んできた過程が語られました。
背景には、地域の農業構造の変化があります。かつてスイカの産地であった地域では、贈答用スイカの作付面積が減少し、新たな作付けや経営の形が求められるようになりました。農家にとって負担の大きい部分を試験農場や法人が引き受け、トマトなどで収益を確保しながら、次の可能性を探ってきたという説明がありましたが、スイカ好きとしては少し寂しい思いもありました。
あわせて、興農園グループの一員である有限会社アーティフルの取り組みについてもお話を伺いました。アーティフルでは、高付加価値野菜の栽培を通じて、農業を「作って終わり」にせず、どのようにすれば収益につなげられるかを実践的に検証されています。試験農場で得られた知見を実際の営農に落とし込み、農業法人として採算の取れる形を探り続けている点は、興農園さんの「支える農業」と表裏一体の関係にあると感じました。
視察の中では、20種類のカラフルミニトマトも見せていただきました。赤や紫、緑、ゼブラ柄、プラム型、ピンクのハート形など、色・形・味がそれぞれ異なるミニトマトが一粒ずつ丁寧に箱詰めされており、これまでの「ミニトマト」のイメージを大きく広げるものでした。完熟でありながらグリーンのまま収穫される品種もあり、見た目の美しさと味の違いを楽しめる点が印象に残りました。高級感のある箱に詰められており、贈答用としての需要を意識した商品設計であることがよく分かりました。

一方で、「日本の有機栽培には課題が多い」という言葉も聞かれました。海外では将来世代のために高くても良い野菜を選ぶ意識がある一方、日本では価格に転嫁しにくい現実があります。技術や設備で補える部分はあるものの、有機栽培だけで持続する構造には、依然として壁があるという声も聞くことができました。
法人化についてお聞きしたところ、赤字部門を抱える中で、組織としてのモチベーションを維持しづらい局面もあったそうです。しかし、経営として整理したことで意識が変わり、ここ5〜6年でようやく形になってきたというお話を伺うことができました。

「利他利還」という会長が掲げた言葉の通り、農業そのものを支えることが、結果として自分たちに返ってくるという考え方が、企業文化として根付いているように感じました。この考え方は、先に訪れたオオヤブデイリーファームさんやパストラルさんにも共通して感じたもので、九州の地域性や風土と何か関係があるのか、気になるところです。

興農園さん、そしてアーティフルさんの取り組みは、有機農業の理想を語るものではなく、技術、経営、人材を通じて「現実としてどう成立させるか」を問い続ける実践でした。中山間地の農業を考えるうえで、多くの示唆を得た視察となりました。
■株式会社 興農園
滋賀県議会議員 野田たけひろ