Blog活動日誌

2025年12月23日 県外調査 株式会社パストラル(熊本県山鹿市)

おはようございます。
滋賀県議会議員の野田たけひろです。

環境農水常任委員会の県外視察で、熊本県山鹿市にある株式会社パストラルを訪れ、代表取締役の市原幸夫さんからお話を伺いました。

産地アイスの製造を起点に、農業、加工、流通までを一体で捉える同社の取り組みは、中山間地農業が直面する厳しい現実から目を背けず、事業として向き合ってきた結果だと強く感じました。

市原さんが語られたのは、中山間地農業の深刻な現状です。農業者は5年で約25%減少し、担い手の多くは75〜85歳。「後継者不足」ではなく、すでに「後継者不在」の段階に入っているという言葉が印象に残りました。農作業の約3割を占める草刈りは、どれだけ手間をかけても価格に反映されず、赤字を年金で補う構造が変わらず続いています。
「今年は安かったね」で終わってしまう農業の中で、「こんな農業を子どもに引き継がせられない」と嘆く声も少なくないそうです。
さらに、親世代の経営はどんぶり勘定で、実際には収益が出ていないことを知り、「だから継ぎたくない」と語る若い世代の声も聞いてきたという話から、現場の問題の深さを強く感じました。

こうした状況の中で、市原さんが着目したのが規格外農産物でした。規格を決めているのは農家ではなく中間業者であり、そこにこそ価値をつけ直す余地がある。思いだけで事業を立ち上げ、6年間無給で続けたという覚悟の背景には、「一番汗をかいている農家にお金が回っていない」という強い問題意識があります。規模拡大ではなく価値の拡大を選び、生産・加工・流通を貫くことで、里山農業の新たなモデルをつくろうとしています。

また、「なつかしい未来」「農業と人間のスピードが合っている」という言葉も心に残りました。効率を追いすぎ、人のリズムと合わない社会は、やがて人を壊してしまう。冷菓という“おもしろさ”を入口に、郷土菓子、景観、観光、林業へとつなげていく発想に、地域を続けていくための知恵を感じました。

特筆すべきは、市原さんの3人の子どもたちがそれぞれUターンし、会社の中核を担っている点です。
長男の邦彦さん・智美さん夫婦がアイス部門の開発・販路開拓。次男の伸生さん・奈穂子さん夫婦は農業部門で合鴨水稲や栗、ワイン用ぶどうなどの栽培を中心に担い、三男の勇生さん・かおりさん夫婦はフランス菓子専門店「ricca」でパティシエとして自社生産品の価値を高めています。

農業、加工、商品づくりと形は違っても、家族が地域に戻り、仕事として里山と向き合っている姿は、「子どもに継がせられない」と言われる農業の世界に、ひとつの希望を示しているように感じました。

「里山の農業が壊れれば、自分たちの仕事もなくなる。だからこそ、人と直接つながり、小さくても強い地域のあり方を追求する。」その覚悟と実践に、多くの示唆を得た視察でした。

滋賀県議会議員 野田武宏

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