Blog活動日誌

2025年4月26日 令和7年2月定例会議02月25日一般質問全文

◆9番(野田武宏議員) (登壇、拍手)チームしが 県議団、立憲民主党所属、野田武宏です。
まだまだ世の中に蔓延している漫画に対する偏見への気づきになることも願って、通告に従い、一問一答方式で、滋賀県と滋賀県立図書館における漫画の在り方について伺います。
また、以下、作者の名前の敬称などについては、全て省略させていただきます。

全国出版協会、出版科学研究所の推計では、令和5年の漫画市場規模は約6,937億円とされ、過去最高となっています。また、国内のみならず海外を含めると3兆円に迫ろうとしているその市場規模は、将来は5兆円規模になるのではと見られています。この市場には、工業立国の立ち位置が危ぶまれるこの国の自動車産業に代わる基幹産業としての期待する声も少なくありません。
国内の政界では、国会議員のMANGA議連に現在110人を超えた超党派の議員が所属し、漫画好きを公言している麻生太郎元総理が最高顧問を務めています。また、国会議員の赤松健参議院議員は、週刊少年マガジンで連載をしていた漫画家で、自身のウェブサイトでは定期的に漫画による国会話を掲載し、政治への新しい入り口となっています。
海外では、フランスのマクロン大統領が、「ドラゴンボール」の作者、鳥山明に追悼の意を表したり、「ワンピース」の尾田栄一郎との面会を熱望し、これはかなわなかったものの、原画をプレゼントされたことをSNSで報告するなど、その影響力はとどまることを知りません。
政界のみならず、スポーツ選手では、サッカーのメッシやネイマールなど、数多くのサッカー選手が「キャプテン翼」好きを公言し、中には必殺シュートをまねした動画を投稿する選手もいます。
近年の日米野球を盛り上げる大谷翔平も、164キロの直球を投げ、打力にも秀でた、まさに二刀流の原型とも言える主人公が活躍する野球漫画「MAJOR」を高校時代に愛読していたことを公言し、続編の再開時にはコメントも寄せています。
必殺シュートや、かめはめ波を撃とうとする子供たち、投手と打者の両立など、超人的な姿に憧れ、夢を見たり、こういう大人になりたい、こういう人になりたいというヒーロー像に対して、視覚的にもイメージしやすい漫画に憧れて、漫画を超えるような現実を生み出してきた著名人は少なくありません。
しかしながら、この30年ほどの漫画の単行本の価格推移を見てみると、今から28年前、平成9年に発売された人気漫画「ワンピース」の第1巻は当時410円でしたが、先月発売された110巻は572円と、約39.5%も価格が上昇しています。一方で、34年前、平成3年に446万6,000円だった平均年収は、令和5年に約3%の460万円にしか上昇しておらず、この30年で経済的に苦しい家庭が増え、夢を見ることができる漫画を買うのが難しい子供が増えていることが想像できます。
そこで、県立図書館の蔵書の選定において、漫画の収蔵はどのような方針で決められているか、教育長に伺います。

○議長(有村國俊) 9番野田武宏議員の質問に対する当局の答弁を求めます。

◎教育長(福永忠克) (登壇)お答えをいたします。
県立図書館の図書の選定につきましては、滋賀県立図書館蔵書構成方針に基づいて行っているところでございます。その中で、漫画につきましては、2の主題別蔵書構成方針の芸術の項目で、「漫画・劇画は原則として収集対象としない。ただし、保存価値の高いと判断されるものについては、限定して収集する。」としているところでございます。

◆9番(野田武宏議員) (登壇)ありがとうございます。
原則として収集しないということですが、この選定基準、どのような理由で設けられたか、教育長に伺います。

◎教育長(福永忠克) お答えをいたします。
先ほど御答弁申し上げました蔵書構成方針につきましては、平成15年度に、それまでの収集方針に代わって設けられたところでございます。その中で、漫画については原則として蔵書対象としないとされておりました。
この策定の理由につきましては、2度の資料整備計画が終了いたしまして、県立図書館といたしまして一定レベルの資料数に達した後、これから全体としてどのような蔵書を構築していくのか方針を立てたものと考えているところでございます。
なお、蔵書構成方針につきましては、令和2年の6月にも改訂を行いまして、現在の形になっているところでございます。その際、漫画につきましては、以前は原則として収集しないとなっていたものを、厳選して収集するという趣旨のただし書を追加したところでございます。

◆9番(野田武宏議員) (登壇)ありがとうございます。
漫画については、戦時下、内務省から出された漫画を含む全ての子供向けの出版物を統制する児童読物改善に関する指示要綱によって、漫画を俗悪なものとし、その後、悪書追放運動につながっていったとされています。この際に生まれた漫画イコール悪書と社会的に否定された歴史は、今でも世の中に蔓延しているという声があります。一時期、犯罪者の自宅から大量の漫画が見つかったことから、その関連性が大きいかのような報道されたことがあり、いまだにそう思い込んでいる人が一定数いる現状もあります。しかしながら、最近の研究では、世界で一番漫画を読んでいると言われる日本の犯罪率の低さから、漫画と犯罪への影響については疑問視されています。
マンガ感想文コンクールという漫画に特化した読書感想文のコンクールがあり、滋賀県教育委員会はそこに後援という形で関わっています。このコンクール、令和5年には大津市立石山中学校が団体賞を受賞しているほか、滋賀県の小学6年生が特別賞を受賞するなど、その現状からも、滋賀県内で漫画に関心を持つ学校や子供がいることがうかがえます。
また、公益社団法人全国学校図書館協議会や、毎日新聞社が主催し、小中高の担当課に依頼が来る青少年読書感想文全国コンクールについては、文部科学省、こども家庭庁が後援する有名な読書感想文のコンクールなのですが、このコンクール、意外にも漫画の応募を禁止していません。
そこで、コンクールに提出できる漫画を読むために、県立図書館に足を運んだ場合、いわゆる学習漫画を除いた漫画の配架をされているのか、滋賀県立図書館の現状を教育長に伺います。
また、以降、特別な断りがない限り、漫画とは学習漫画を除くものとします。

◎教育長(福永忠克) お答えをいたします。
県立図書館では、先ほど御答弁申し上げました方針に基づきまして選定して購入した漫画、また、寄贈により蔵書とした漫画を所蔵しておりますけれども、それらはスペースでありますとか保存の都合で書庫に配架されておりまして、利用される方の請求によりまして書庫から出し、閲覧や貸出しも他の図書と同様に行っているところでございます。

◆9番(野田武宏議員) (登壇)ありがとうございます。
本県における漫画を収蔵、配架、貸出ししている市町立図書館の状況、利用者の反応について、データがあれば教えてください。教育長に伺います。

◎教育長(福永忠克) お答えをいたします。
県内の市町立図書館の状況につきましては、県で把握している限りでは、15の市町で、学習漫画を含めてではございますが、漫画を所蔵、また、開架スペースに配架、貸出しを行っていると承知をいたしております。
なお、利用状況および反応につきましては、漫画に特化したデータは把握はしておりません。

◆9番(野田武宏議員) (登壇)ありがとうございます。
一部市町で導入しているということですが、全ての市町ではないということで分かりました。
都道府県立図書館は、市町村立図書館を支援する役割を持っています。広域的かつ総合的な資料の収集、整理、保存、提供を行い、市町立図書館の運営を円滑にするための援助を求められていることを考慮すると、膨大な量になりがちな漫画こそ県が支援すべきと思います。
それでは、引き続き、他府県の状況はどうでしょうか、教育長、お願いします。

◎教育長(福永忠克) お答えをいたします。
他の都道府県立図書館につきましては、これはちょっと調査をしておりませんので、インターネット上で確認できた範囲ではございますが、16道県の収集方針に、滋賀県の県立図書館と同様、厳選して収集する旨の記載がされているところでございます。また、5つの府県では選定の対象外や原則として収集しないとされているところでございます。

◆9番(野田武宏議員) (登壇)ありがとうございます。
平成29年学習指導要領においては、漫画についての言及がポジティブに示されていますし、令和5年第2期文化芸術推進基本計画でも、漫画等の創造、振興を図るため、優れた若手の育成を支援するともあり、国のスタンスも他県や市町で漫画を配架する後押しとなっているのではないでしょうか。明確な理由がなく漫画が除外されている場合、過去につくられた何気ない規制によって、自分では気づかない無意識の思い込みや偏見であるアンコンシャスバイアスが働き、滋賀県内に漫画に対する偏見や差別を生んでいないか心配になります。
それでは、次に、県立図書館における貸出冊数の推移や、特に若者の利用状況について伺います。
県立図書館における貸出冊数が減少してきている要因をどう見ているか、教育長に伺います。

◎教育長(福永忠克) お答えをいたします。
貸出冊数の減少につきましては、全国的な傾向でもございまして、県立図書館で申し上げれば、新刊購入図書が減っていること、また、市町立の図書館が充実したこと、さらに、県民が情報を得る手段が多様化している、こういったことが影響しているのではないかと考えているところでございます。
これまで最も貸出冊数が多かった時期、これは平成19年度でございますが、これと比べますと、最も利用者数が減少しているのは30代、そして次に20代であること、また、一般図書の貸出冊数はほぼ半減となってございますが、児童書につきましては微減にとどまっている状況でございます。

◆9番(野田武宏議員) (登壇)続いて、本県の子供の読書活動の現状について伺います。
過去10年、本県で1か月間に1冊以上本を読んだ児童生徒の割合と全国平均の割合を比較すると、基本的に本県が全国平均を上回っている一方で、1か月間の平均読書冊数に関しては全国平均を大きく下回っています。
これに対し、令和4年9月定例会議で、この原因はどこにあると認識しているか、成田県議から教育長に質問がありました。答弁では、原因を特定するのが難しいが、全国学力・学習状況調査における学校の授業時間以外での平均読書時間が、本県の場合は継続して全国平均を下回っているという調査結果から、子供たちの自主的な読書習慣の定着に課題があるのではないかと教育長が答えられています。
月に1冊以上本を読む児童数は基本的に全国平均なのに、月の平均読書冊数が全国平均以下というデータからは、子供たちが自ら本を読みたいという環境が整えられていないように見受けられます。そこで、改めて、本県における子供たちの読書時間について、どのように受け止めているか、教育長に伺います。

◎教育長(福永忠克) お答えをいたします。
子供たちの読書時間につきましては、学校の授業以外で平日に1日当たり10分以上読書をしている児童生徒の割合が、令和5年度まででございますが、全国学力・学習状況調査の調査項目にございまして、本県と全国の比較が可能でございます。それによりますと、令和元年以降、本県は、全国平均を小学校6年生で1から2ポイント、中学校3年生では6ポイント前後下回っておりまして、当時にも御答弁申し上げましたが、引き続き、読書習慣の定着に課題があるものと考えているところでございます。

◆9番(野田武宏議員) (登壇)ありがとうございます。
どんな本であれ、自発的に本を読みたいという気持ちの変化につながっているかどうかは、貸出冊数が減少している現状にもつながる大事なポイントだと思います。学習漫画も含め、もし漫画を読みたいと思っている子供がいるのなら、学習漫画のエジソンや織田信長を読んでもらうことで、その人物に興味を持ち、その人物のことをより知りたくなり、関連書籍を読みたくなるということもあります。基本的に文字で構成された、いわゆる活字本に移行していく、そんな役割が漫画にはあるのではないしょうか。
これが学習漫画だけではなく、例えば、源氏物語を漫画化した「あさきゆめみし」から活字本の源氏物語を読んだり、大河ドラマを見て滋賀県観光につながったということもあったかと思います。令和5年に滋賀県観光に大きな恩恵をもたらした「翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~」も、映画の内容はオリジナルの展開ですが、もともとは漫画が原作です。知り合いは、映画を見てから、瀬田川洗堰の水門に関する書籍を読んだと話していました。
また、全国学校図書館協議会絵本選定基準によると、一部、青少年、成人向けのものを除き、絵本は主として乳幼児、児童を対象としたものと分類されています。絵本を読み、活字本も自ら読みたいと思うまでの橋渡しとしても、絵と活字がバランスよく使われている漫画は適当な読書なのではないでしょうか。
次に、滋賀県子どもの読書活動に関する調査について伺いますが、1か月に読んだ読書冊数を調べるこの調査で、令和6年5月の1か月間に読んだ書籍の冊数では、「教科書、学習参考書、マンガ、雑誌やふろくを除く」の記載があります。これは割と一般的な質問でも記載されている内容で、授業などで使われている教科書や学習参考書を含んでしまうと、純粋な読書という欲しいデータから大きく乖離してしまうというのがおおよその理由かと思われます。ただ、漫画を読書から除く理由に関しては、漫画を活字本より下にみなすアンコンシャスバイアス以外で、どのような理由か、あまり理解できませんでした。
読書の現状を正確に把握するためには、岡山県や栃木県のように漫画を含んだ調査も必要かと考えますが、本県で他県のように漫画を含んだ調査を行っているか、教育長に伺います。

◎教育長(福永忠克) お答えをいたします。
不読率などの読書量の調査につきましては、全国学校図書館協議会による全国調査が行われておりますが、その調査におきましては、漫画を含まないというふうにされておりまして、他府県との比較を容易にするために、本県における調査でも漫画を対象としていないものでございます。
なお、令和5年度に滋賀県子ども読書活動推進計画を改定するに当たりまして、高校生世代を対象にして実施をいたしました次世代の読書意識に関するアンケート調査では、よく読む本のジャンルの選択肢としてコミックの項目を設けて状況の調査をしたところでございます。

◆9番(野田武宏議員) (登壇)ありがとうございます。
全国の調査の中に漫画を含まないということで、それとは別に岡山県とか栃木県は独自の調査をしていると思うんですけど、今御答弁いただいた高校生を対象にする調査、その結果に関してはどのようなデータだったか教えていただけないでしょうか。教育長、お願いします。

◎教育長(福永忠克) お答えをいたします。
実施しましたのは令和5年10月でございまして、高校生を対象にアンケートを実施し、抽出調査でございますので、95人の高校生から回答を得ました。
よく読む本のジャンルを複数回答で聞きましたところ、一番多いのが小説、ライトノベル、エッセイなどの文学でございまして、95人中76人でございましたが、2番目がコミックでございまして、こちらは95人中50人の生徒が回答してくれたところでございます。

◆9番(野田武宏議員) (登壇)ありがとうございます。一定の需要があるということが分かりました。
岡山県教育庁生涯学習課の令和5年度子どもの読書環境に関する実態調査で、1か月にどんな紙の書籍を読んだのか聞いたところ、小学校と高校では漫画雑誌を含む漫画が最も多く、中学校についても文字だけが書かれた本との差は僅かとなっています。これは電子書籍だとより顕著に現れ、どんな本を電子書籍で読んだのかという質問に対し、漫画雑誌を含む漫画は小学校で30.5%、中学校で51.4%、高校で45.4%と、その他の項目から群を抜いて圧倒的に読まれていることが分かります。現在の本県の調査ではつかみ取ることができない子供の読書に関する実態がここにはあるのではないでしょうか。
また、栃木県の令和5年度子ども読書活動に関する実態調査でも似たような質問項目が設けられています。
こちらは学年を限定した調査ではありますが、1か月に平均してどれぐらいの本を読むのかという質問が、漫画や雑誌を除いたものと漫画を含んだ質問に分けられており、全ての学年で漫画の読書量がその他の書籍よりも多いことが分かります。活字本と漫画では読む速度に大きな違いも出ますので、一くくりにするのは難しいですが、このように子供たちの状況や希望を的確に把握することは、より実態に即した公共サービスを実現する上で重要ではないでしょうか。
過去の子ども県議会で、川島千明議員が、漫画だけに特化したマンガ図書館の設立を提案しています。先日、お父さんにも確認したところ、お父さんも漫画を読むということで、今回の答弁には大いに期待しているのではないかと思うところですが、そんな声からも分かるように、間違いなく子供たちの間で漫画の需要があるということが分かります。答弁では「本は苦手、漫画なら気楽に読めるのにという人に向けて、漫画の魅力を読書と学びのきっかけにするのはとてもいいアイデアだと思います」と答えていますが、その後、どのような動きがあったのか、教育長に伺います。

◎教育長(福永忠克) お答えをいたします。
令和4年度の子ども県議会において、子ども議員からマンガ図書館に関する御提案がございました。その御提案の趣旨も踏まえまして、翌令和5年の2月には、中学校や高校の図書委員等の生徒の皆さんから、本を読まない人に読書の楽しさを伝える方法について意見を聴くという機会を設けさせていただきました。その中では、図書館に漫画や写真集をたくさん置く、まず本に対するハードルを下げる、そして本に触れる場所を増やすなどの意見をいただいたところでございます。これらの意見を、令和6年3月に策定をさせていただきました、第5次になります滋賀県子ども読書活動推進計画の内容なり、今後の本県の読書に関する方向性を示すものの参考とさせていただいたところでございます。

◆9番(野田武宏議員) (登壇)ありがとうございます。
参考にさせていただいたということですけど、例えば、県立図書館で漫画を置くことに対して、積極的に何か取り組んだりとかということは特にされてないんでしょうか。何かそういう取組があれば、教育長、御答弁お願いします。

◎教育長(福永忠克) 今回の御意見では、先ほど申し上げましたけれども、本に触れる場所を増やしてほしいという御意見もございました。こういった点を踏まえまして、全ての子供たちが、やはりいつでもどこでも楽しく読書ができる、そういう滋賀をつくっていくことが大切ではないかと考えたところでございます。
つきましては、どこか1か所にハードを造ったり、どこか1か所に整備をするのではなく、公立図書館でありますとか、あるいは学校図書館、また地域など、様々なところで子供たちが置かれた環境にかかわらず読書に親しむことができるように、滋賀まるごととしょかんを目指すという方向性を打ち出してきたところでございます。
つきましては、この漫画も含めまして、子供たちにとって身近な図書館の充実がやはり子供たちにとって必要だと考えておりますので、本年度からこの取組の一つとして学校図書館の活性化に取り組み始めさせていただいているところでございます。

◆9番(野田武宏議員) (登壇)ありがとうございます。
途中から、マンガ図書館を造ってくださいという子ども県議会の声ではなくて、アンケートに対するお答えみたいな形になっていたかと思うんですけど、ぜひとも半年以上の期間をかけて提案文をつくる子ども県議会の声にもしっかりと耳を傾けていただきたいと思います。
以前は、活字本などに比べて、絵が多い漫画は字が少ないから読解力が身につかない、娯楽であり文学作品とは違う、漫画ばかり読んでいると思考力が育たないなどと批判的な声が多くありました。しかしながら、最近の研究論文では、漫画と文章の理解を比較した場合、文字と絵という異なる情報を統合処理する高次の認知活動が作用していることが指摘されています。また、情報を読み解く力、いわゆるビジュアルリテラシーや、複雑なストーリーを整理する力も必要とされ、漫画は、文字、視覚情報、図やイラストなどを組み合わせた、いわゆるマルチモーダルテキストとして、子供たちの学習やリテラシー教育においても高い効果があるとの声が上がっています。
そこで、漫画を収蔵することは、知の拠点としての役割を目的とする県立図書館にどのような影響があると考えますか、教育長に伺います。

◎教育長(福永忠克) お答えをいたします。
ただいま議員から御指摘をいただきました漫画の持つ多様な価値につきましては私も承知をしておりまして、私も漫画を読んでおりますので、その漫画からいろんなものに興味関心を広げる一つのツールであることは十分認識をしております。
つきましては、県立図書館でも現在は、厳選してではございますが、収集に努めているところでございます。県民の活動を支えます知の拠点として、県民の身近にある市町立の図書館への支援に努め、漫画に限らず市町のリクエストに応えて県民の求めておられる資料を収集、提供することは、県立図書館の知の拠点としての最も重要な役割であると認識をいたしております。

◆9番(野田武宏議員) (登壇)ありがとうございます。
厳選して収集しているということですが、直近で導入された漫画について教えてください。教育長、お願いします。

◎教育長(福永忠克) すいません、私、全て承知してるわけではございませんが、図書館によりますと、最近購入した漫画の事例としては、漫画によるジャーナリズムの例といたしまして、コミック界のアカデミー賞とされるアメリカのアイズナー賞を受賞した「ガザ」、これは多分、ガザ地区のガザだと思いますが、「ガザ 欄外の声を求めて」というのを、これは昨年──令和6年10月に刊行されておりますが、11年に納入したと聞いているところでございます。それを含めまして、名作、コミックエッセイ、そしてジャーナリズムなどの本を収集をしていると聞いております。

◆9番(野田武宏議員) (登壇)すいません、11年というのは2011年ですか。もう一度、教育長、お願いします。

◎教育長(福永忠克) すいません、購入したのは令和6年──昨年の10月に刊行されて、11月に納入したものでございます。失礼いたしました。

◆9番(野田武宏議員) (登壇)ありがとうございます。
いわゆるコミック、少年誌など、少女漫画などについては、どのような状況か教えてください。

○議長(有村國俊) 教育長ですね。

◆9番(野田武宏議員) 教育長、お願いします。

◎教育長(福永忠克) お答えをいたします。
現在所有しているというか、収集している主なものは、先ほども申し上げましたように、名作と言われるものとか、コミックエッセイと言われるジャンルのもの、そしてジャーナリズムの関係、そして、何か滋賀県の資料とか水資料としての性格を有するものでございまして、議員御質問のものがどういうものかというのにもよりますけれども、そういったものを全て収集する形にはなっていないというふうに認識をいたしております。

◆9番(野田武宏議員) (登壇)ありがとうございました。
漫画は、続き物として大量に購入するケースが多く、図書館の書架を占領してしまう可能性が高いことや、ブックカバーフィルム貼りが増えてしまうこと、その素材から、破けやすいなどという問題点がありますが、これは電子書籍サービスによって解消できます。電子書籍については、昨年の重田議員や令和5年の駒井議員からも質問が出ていましたが、今回は図書館に漫画を導入する際の問題点を解消するための提案です。
電子書籍サービスの中には、自分のスマホを活用し、自宅で漫画を見るようなサービスもあります。それは大変便利かと思いますが、居場所としての図書館を意識する本県では、図書館が、子供たちが義務や必要性に縛られず、自らの心に従って向かう場所、いわゆる第3の居場所になっていくことも大切だと考えます。
そこで、個人的には、図書館内のみで使える電子漫画用のタブレットを用意し、そこから利用できる電子書籍サービスを活用することで、書架の占領や破けやすいという問題点が解消できる上に、県立図書館に足を運んでくれる子供が増えると考えますが、県立図書館における漫画電子書籍サービスの導入に関する検討状況について教育長に伺います。

◎教育長(福永忠克) お答えをいたします。
県立図書館では、これまでも電子書籍サービスの導入については検討を続けてきたところでございます。その結果といたしまして、費用面の問題でありますとかコンテンツの数、そして保存等の課題があるものと考えております。
漫画につきましては、現在図書館で収集、提供が可能な電子書籍の中には、一部の学習漫画、またコミックエッセイを除き、ほぼ漫画が含まれておりませんという、こういう状況もありまして、ここまで議員からお取り上げいただいているような漫画は、現時点において図書館向けの電子書籍サービスでは提供がされていない現状にあるものと県立図書館から聞いているところでございます。

◆9番(野田武宏議員) (登壇)ありがとうございます。図書館向けのサービスとしてないということで承知いたしました。ぜひともこれからこの分野は広がっていくと思いますので、引き続き情報収集をお願いします。
次に、芸術としての漫画について伺います。
日本やアメリカとともに漫画が大きな産業となり、令和4年には市場規模が世界第2位の約530億円となった国にフランスがあります。今月7日に三日月知事が訪問した首都パリは、芸術の都とも呼ばれ、世界的に有名なモネやロダンなどの芸術家を輩出し、ルーヴル美術館を有していることでも有名な芸術の国ですが、その国が日本の漫画を高尚な文化として受け入れ、小さな町の図書館でも日本の漫画を置くところがあるというのはまだまだ知られていないのではないでしょうか。
そこで、芸術面から漫画について伺います。
滋賀県立美術館における漫画を取り上げた企画展について、どのようなものがあり、どのような企画意図だったか、文化スポーツ部長に伺います。

◎文化スポーツ部長(東郷寛彦) (登壇)お答えいたします。
県立美術館では、これまで、平成15年──2003年にフランスコミック・アート展を、また、平成26年──2014年には手塚治虫展を開催しております。
フランスコミック・アート展では、当時、日本ではあまり知られてこなかったフランスコミックの全貌と、その芸術的な世界を紹介したものでございます。
また、手塚治虫展では、日本の漫画界の巨匠であり、世界中の人々を魅了し続けている彼の生涯と業績に多角的に迫り、作品と作者が未来へ託したメッセージを展覧したところでございます。
美術館は、絵本やアニメを含めた幅広い分野の芸術作品を取り上げる中で、漫画の展覧会も開催してきたところでございます。

◆9番(野田武宏議員) (登壇)ありがとうございます。
手塚治虫展とフランスアート展のそれぞれの大体の動員数について教えていただければと思います。文化スポーツ部長、お願いします。

◎文化スポーツ部長(東郷寛彦) お答えいたします。
フランスコミック・アート展は3,600人余り、手塚治虫展が1万5,200人余りでございます。

◆9番(野田武宏議員) (登壇)ありがとうございます。
先ほど、図書館のほうで海外のガザの漫画についてお話しされていましたけど、この手塚治虫とフランスアートの漫画の違い、動員客数でも、やっぱり興味関心があるものというのがどこにあるのかというのは割とはっきり出るんじゃないかなと思いますので、県立図書館がどういう目的でそれを入れているのかというのにもちょっと考えを寄せていただければと思います。
フランスには芸術に関する分類が存在しています。建築、彫刻、絵画、音楽、文学、演劇、映画、メディア芸術の8つを指すのですが、今まさに漫画文化バンド・デシネが第9の芸術として認められるようになりました。
そもそも日本の漫画の始まりとされ、12世紀頃に描かれたとされる鳥獣人物戯画や伴大納言絵詞は、絵画として高く評価され、国宝とされています。同じように、工場に勤める自堕落な青年は縛り首となり、働き者がロンドン市長になるという12枚の版画を描いたウィリアム・ホガースや、友人たちのために描いたこま割り漫画が詩人のゲーテに評価され海を渡ったことで、最初のアメリカンコミックとされるロドルフ・テプフェールの作品などは、漫画のもととされ、技術作品としても高く評価されています。
資料を御覧ください。
(資料掲示)これは宗祖親鸞聖人750回御遠忌記念事業の一環で漫画家の井上雄彦が描いたびょうぶの絵のポストカードになります。これは実際かなり大きなびょうぶ絵になるんですけど、これはそのポストカードを写真で撮ったものです。この井上雄彦は、バスケットボール漫画の「スラムダンク」の作者として有名であり、国民文学作者である吉川英治の「宮本武蔵」を原作とした漫画「バガボンド」において、その内容と高い画力によって、第4回文化庁メディア芸術祭漫画部門において大賞を受賞するなど、現代アートとしての可能性だけでなく、漫画としての可能性を名実ともに示している存在です。
そこで、さきに述べた鳥獣人物戯画やウィリアム・ホガース、この親鸞聖人のびょうぶ絵なども踏まえて、本県において漫画を芸術面からどのように捉えているか、文化スポーツ部長に伺います。

◎文化スポーツ部長(東郷寛彦) お答えいたします。
漫画は、歴史的に浮世絵や風刺画から発展したものとも伝えられており、絵に文字や動き、物語が加わることによって物事を分かりやすく伝える表現方法の一つとして発展してきた芸術であると受け止めておりまして、滋賀県文化振興条例におきましても、漫画をメディア芸術の一つと位置づけているところでございます。

◆9番(野田武宏議員) (登壇)ありがとうございます。
今定例会議で提出されている滋賀県子ども基本条例制定においては、当事者である子供の権利や意見をより重視する、子どものために、子どもとともにつくる県政の実現が必要と考えられています。子供が望むものを大人が何の根拠もなく抑制してしまうことは、子供を中心に置き、子供が幸せに成長し、大人が子育ての喜びを実感できる滋賀を実現するために、新たな条例の策定について検討する本県の図書館のスタンスとして疑問を感じます。
そこで、滋賀県子ども基本条例制定を進める立場から、県立図書館における漫画の在り方について、どのように受け止めているか、子ども若者部長に伺います。

◎子ども若者部長(村井泰彦) (登壇)お答えいたします。
滋賀県子ども基本条例案におきましては、子供の権利を守ることを明確に位置づけ、子供の意見の尊重や、子供の人生にとって最もよいことは何かを考えるという子供の最善の利益の考慮、そして意見に対する適切な応答などを盛り込んでいるところです。
県立図書館におけます漫画の在り方につきましても、これまで様々な観点から取組をされてきたというふうに認識しております。今後、条例の考え方に沿って対応することも重要ではないかと考えております。
条例に基づきます様々な取組が庁内で推進されますよう、今後、子供の意見を聴く際の留意点などをまとめたガイドラインを作成し、子どものために、子どもとともにつくる県政の実現に向けて、さらに取り組んでまいります。

◆9番(野田武宏議員) (登壇)ありがとうございます。
そもそも、私たちが子供だった頃と比較して、今の子供たちは、年間授業時間数の増加など、様々なところで本を読む時間が削られています。そんな中で、既に漫画すら読まなくなってきているという声も耳にしますが、動画やゲーム、受験勉強では得られないものが読書にあるのではないでしょうか。
令和4年9月定例会議で三日月知事は、「こども としょかん」の設置に向けた知事の思いを聞かれ、本について、「本との出会いは幸せにつながり、読書の喜びや楽しさ、様々な世界を知り、視野を広げるきっかけにもなる。本を読んでいると、違う自分や別の場所にいるように感じられるのも魅力の一つ。いろいろな考え方や生き方に触れ、それを子供のうちに習慣づけることは、生涯を通して楽しく学び続ける基盤となり、やがて私たち人類を自由にする力にもつながる。だからこそ、図書館や読書活動は、人々、特に子供たちの成長に大きな役割を果たすと考えている」と答えています。とても胸に響く答弁で、共感しかありませんが、この発言の本や読書の中にどれだけ漫画が含まれていたのかは定かではありません。
ただ、私自身は、漫画というだけで差別することなく、同じ本というくくりの中で、漫画に対しても知事と同じ思いを抱いています。どちらにせよ、当時の答弁の内容は、活字本だけではなく、漫画からも得られるものばかりではないでしょうか。
そこで、今までのやり取りを踏まえて、読書という側面だけではなく、文化芸術的側面も踏まえて、本県における今後の漫画の在り方について、三日月知事の見解を伺います。

◎知事(三日月大造) (登壇)お答えいたします。
当時の答弁に、私、漫画というウエートはほとんどありませんでした。正直申し上げて。ただ、漫画というものが世代を問わず人々の心を捉え、生活の彩り、日々の活力を生み出すとともに、海外でも御紹介いただいたように高く評価される、日本が世界に誇る文化だと認識しております。あわせて、子供たちにとって幅広い読書の世界への入り口、橋渡し役を果たすだけでなく、活字に読みづらさを感じる子供などが本に親しむツールの一つにもなると考えております。こうした漫画の価値を教育や文化芸術など様々な面で生かしていくことは有意義なことであると考えます。

◆9番(野田武宏議員) (登壇)紳士的な御答弁ありがとうございました。
様々な特性を持つ人の中に、活字本を読むのは大変だけど、漫画なら読むことができるという人もいるようで、LLと呼ばれる知的障害のある方をはじめとした一般的な情報提供では理解が難しい方にとっても読みやすいようにつくられた漫画もあり、漫画の可能性はとどまることを知りません。
何より、漢字をあまり読めないまま成長してきた子供にとって、漫画は多くの漢字に振り仮名が振られていることで、漢字を読めないという事実を周囲に知られることなく読書をすることができるという側面もあります。様々な人の生き方について価値観を大切にする時代だからこそ、漫画の受け止め方についても変化が必要だと思います。
さきのマンガ読書感想文で、滋賀大学教育学部附属の小学6年生、澤井悠樹さんは、「友だちは宇宙人」というタイトルで、冨樫義博の「レベルE」を読んだ感想文を書き、特別賞を受賞しています。感想文の題材になった漫画は、地球人と似た姿形のものを含めて、既に様々な宇宙人が実は地球に住んでいたと判明していく物語です。
感想文には、「すごく好戦的で、ほかの惑星を滅ぼしてしまうような、怖がられているような宇宙人だけど、野球が好きだから地球人は大切にするとか、何を大事にしているかは、どの星からやってきたのかで全然違う。よく考えてみると、ふだん、僕たちが知らない人と初めて会って、一緒に何かをしたり友達となっていくのと同じ感じじゃないかと思った。同じ地球人でも、いろんなところでいろんな人がいて、みんな違う考え方をしているけど、自分の考えを押しつけるのじゃなくて、言葉を勉強してゆっくり付き合って話をすれば友達になれると思う」とあり、まさに令和4年9月定例会議の知事の答弁に通じるものです。
くしくも昨日でロシアのウクライナ戦争から丸3年になりました。大人たちが始め、いまだ止めることができないこの侵攻を止めるためのとても簡単な方法を小学6年生の彼は漫画から学んだと考えると、その価値は言うまでもありません。
そこで、最後に、滋賀県立図書館蔵書構成方針の資料別蔵書構成基本方針における漫画の取扱いについて、見直しが必要かと思いますが、教育長、伺います。

◎教育長(福永忠克) お答えをいたします。
お取り上げいただきました現行の蔵書構成方針につきましては、平成30年3月に策定をいたしました「これからの滋賀県立図書館のあり方」におけます行動計画の作成と併せて令和2年に改訂をさせていただいたものでございます。その際は、厳選して収集する旨のただし書を追加させていただいたところでございます。
現在も、県立図書館の蔵書に必要と判断したものは収集をしておりまして、市町立の図書館からの要望にも応えることができている状況ではございます。ただ、平成30年につくった「これからの滋賀県立図書館のあり方」につきましては、次期の在り方を策定したいと考えておりまして、その策定に際しまして、蔵書構成方針の検討の一つとして考えてまいりたいと思っておるところでございます。

◆9番(野田武宏議員) (登壇)ありがとうございます。
芸術、美術の面で、蔵書選定に関しての先ほどのお答え、そして、海外のガザの漫画などを取り入れているということですが、私が先ほどから質問しているのは、一般的ないわゆるコミックスの話であって、そこに関しての前向きな検討、お答えをいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。まずそちらを質問させていただきます。教育長、お願いします。

◎教育長(福永忠克) 先ほど御答弁申し上げました蔵書構成方針の検討というのは幅広く検討をしなければなりません。その幅広い範囲が今どこにあるのかという点を直ちにお答えするのは難しゅうございますけれども、やはり県民のニーズなり、県立図書館が果たしている役割を十分踏まえた上で、どういう蔵書を県立図書館がそろえればいいのか、幅広く検討することが大切だと認識をいたしております。

◆9番(野田武宏議員) (登壇)ありがとうございます。
役割ということですが、先ほどお伝えしたとおり、漫画こそ、やはり大量に購入するなどを行うときには、やっぱり県立図書館として一定の市町を支えるような役割が必要ではないかと思いますし、今、実際に市町の図書館で導入ができない、していないというところがありますので、ぜひともこの辺りを含めて考えていただきたいなと思います。
先ほどの基本方針として検討してという、そのタイミングというのが、県のタイミングではなくて、今、その更新するまでの間、子供たちがいないわけではないので、その期間、少しでも早く前向きに進めていくということが大事ではないかと思いますが、教育長、答弁をお願いします。

◎教育長(福永忠克) お答えをいたします。
先ほど県立図書館の役割というお話をさせていただきました。なかなか市町立図書館では購入するのが難しい専門書であるとか、そういったものについては県立図書館が借りることによって、県内の市町立図書館を通じて様々な方に読んでいただくということになりますが、漫画につきましては、ただ、県立図書館で買えるのは、1冊の本を買うということで、大量に買うというのは図書館の蔵書としては適切ではないと思いますので、それを多くの子供たちに読んでもらうのはどうすればいいのかという点も含めまして、できるだけ多くの子供たちに漫画を含めた読書に親しんでもらうのはどうすればいいのか、これは県立図書館の役割もございますし、市町立図書館の役割もある、そして、今取り組んでおる学校図書館の役割もございますので、その点を十分踏まえながら、市町の図書館の関係者、そして子供たちの声も聴きながら取組を進めていきたいと思っておりまして、この次期の在り方につきましては、令和7年度から検討を始めたいと思っておりますので、その中でいろんな意見を聴きながら考えてまいりたいと思っております。

◆9番(野田武宏議員) 終わります。(拍手)

○議長(有村國俊) 以上で、9番野田武宏議員の質問を終了いたします。

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