2026年10月20日 神山まるごと高専を訪問(教育改革・DX・GX推進対策特別委員会県外行政調査)
10月20日は、滋賀県議会の教育改革・DX・GX推進対策特別委員会の県外行政調査で、徳島県神山町にある「神山まるごと高等専門学校」を訪問しました。
神山まるごと高専は、2023年4月に開校した私立の高等専門学校です。「モノをつくる力で、コトを起こす人」を育てることを目指し、テクノロジー、デザイン、起業家精神を組み合わせた独自の教育を行っています。
今回の調査で特に印象に残ったのは、「起業家精神」をどのように捉え、育てようとしているのかという点です。
同校では、起業家精神を、理想の未来を描き、自ら課題を発見し、他人や環境のせいにせず、当事者意識を持って行動し、諦めずに挑戦し続ける力として定義しています。
つまり、必ずしも会社を起こすことが目的ではなく、自分が何を実現したいのかを考え、そのために必要な行動を起こせる人を育てようとしているのです。
私は、この考え方に強く共感しました。
AIをはじめとする技術が急速に進歩する中で、知識や技術を身につけることはもちろん大切ですが、それを使って何をしたいのか、どのような社会を実現したいのかという目的がなければ、技術を生かすことも難しいと思います。
その意味で教育だけの話に留まらず、これからの時代を生きるにあたっては「何ができるか」だけでなく、「何をしたいのか」を大切にすることが、ますます重要になると考えています。
一方で、こうした力をどのように評価するのかは簡単ではありません。
同校でも、起業家精神は通常の教科学習のように成果を測りにくく、教育方法や評価方法について試行錯誤を続けているとのことでした。
そこで、学生自身による振り返りと、スタッフからのフィードバックを組み合わせ、成長の段階を確認する仕組みを導入しています。
これは成績をつけるための評価とは別のもので、学生自身が自分の強みや課題に気づき、次の成長につなげるための仕組みです。大変興味深い取組だと感じ、私からも質問しました。
また、同校では11社の企業からの資金的な支援によって、学生の学費を実質無償化しています。さらに、学生は各企業の名前を冠した奨学生として、企業との交流や共同研究などを通じて学びを深めています。
この企業と学生の組み合わせについて質問したところ、学生の多様性を非常に大切にしていることがわかりました。リーダーシップを発揮する学生、周囲を支える学生、ものづくりに没頭する学生など、それぞれの個性を踏まえてチームを編成し、企業との組み合わせも学生たちの希望を考慮して決めているとのことでした。
単なる抽選ではなく、こうした組み合わせに相当な時間をかけているという説明には、感動すら覚えました。
多様性を大切にするという言葉はよく耳にしますが、多様な学生が互いに学び合える環境を、意図的につくろうとしていることはとても印象的でした。
さらに、学校全体に共通する教育への考え方も素晴らしいと感じました。
例えば、学生に対して「指導」や「支援」という言葉よりも、「応援」という言葉を大切にしているそうです。
15歳で入学する学生を、いつまでも子どもとして扱うのではなく、一人の自立した人間として尊重する。もちろん安全や健康への配慮は必要ですが、大人が先回りして手を出しすぎず、学生自身が考え、挑戦する機会を大切にしています。
寮生活でも、低学年のうちは一定の管理を行う一方、学年が上がるにつれて学生自身の判断に委ねる部分を増やしているように感じました。その結果、学生同士が自主的にお互いを気遣うなど、学校が細かくルールを設けなくても、自分たちで生活を支え合う文化が生まれつつあるとのことでした。
学生の成長のために、大人が何をするかだけでなく、何をしないかまで考えている。この姿勢には、教育の本質に関わる大切な考え方があるように感じました。
また教職員の採用についても、学校の文化との相性、専門性や学校への貢献、そして学生の成長への関心を重視しているそうです。
学校で働きたいという人の中には、自分が教えたいという思いが強い人もいます。しかし、ここでは教えること自体よりも、学生がどう成長するかを大切にしているという説明が印象に残りました。
滋賀県でも2028年4月に県立高専の開校を予定しています。
公立と私立では制度や運営条件が異なりますし、神山まるごと高専の取組をそのまま導入できるわけではありません。それでも、どのような人を育てたいのかという教育理念を明確にし、その理念を授業や学校生活、評価方法、さらには教職員の採用にまで一貫して反映させていく姿勢は、大いに参考になると感じました。
そして、今回の訪問では、もう一つ嬉しい出来事がありました。なんと、私が大学時代にお世話になった職員さんが、この神山まるごと高専で働いており、偶然再会することができたのです。本当に嬉しい再会でした。
学校の説明を伺い、その教育理念や学生との向き合い方に触れる中で、「この人なら、きっとこの学校に合っているんじゃないかな」とも感じました。
教育の仕組みやカリキュラムはもちろん重要ですが、最後は、そこで働く人たちがどのような思いで学生と向き合っているのかも大切なのだと思います。
教育のあり方について多くのことを考えさせられ、思いがけない嬉しい再会にも恵まれた、充実した調査となりました。
野田武宏
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