2026年6月11日 第44回 土砂災害防止『全国の集い』in滋賀 その1
こんばんは。滋賀県議会議員の野田武宏です。
6月11日は、滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールで開催された「第44回 土砂災害防止『全国の集い』in滋賀」に参加してきました。

当日は、三日月大造滋賀県知事、佐藤健司大津市長、加藤誠一滋賀県議会議長をはじめ、国土交通省から國友優砂防部長、近畿地方整備局から齋藤博之局長、全国治水砂防協会、県内外の自治体関係者、砂防・防災に関わる多くの皆さまが参加されていました。




僕自身、これまで東北、真備、熊本など、各地の災害ボランティアに参加してきました。その経験を通じて強く感じているのは、災害は「発生した瞬間」だけで終わるものではないということです。家の中や道路に入り込んだ泥や土砂を取り除く作業は、想像以上に大変です。しかし、それ以上に胸に残るのは、日常が一瞬で変わってしまった現実と、片付けが進んだ後も地域に残る不安です。
被害件数や被害額だけでは見えてこない、暮らしの重みがあります。だからこそ、災害を防ぐこと、被害を少しでも減らすことの大切さを、現場に立つたびに考えてきました。
滋賀県内でも、伊吹山の土砂災害の後に現地でボランティア活動に参加しました。その際、少量でも雨に濡れた土砂を取り除く作業の大変さを感じるとともに、山から流れ出た土砂が人の暮らしにどれほど大きな影響を与えるのかを肌で感じました。
土砂災害は、山間部だけの問題と思われがちです。しかし、豪雨による土砂の流出や河川への影響は、地域の暮らし、交通、農地、さらには下流域の安全にもつながっています。だからこそ、近代砂防発祥の地とされる滋賀で、全国の関係者が集まり土砂災害防止について議論されるこの機会に、改めて現状と課題を学びたいと思い、今回の集いに参加しました。
この集いでは、滋賀が歩んできた砂防の歴史、気候変動によって変わりつつある土砂災害のリスク、そしてこれからの防災・減災のあり方について、多くの学びがありました。4時間を超える長時間の大変充実した内容だったため、今回から3回に分けて報告したいと思います。
第1回となる今回は、全国の集いの概要と、近代砂防発祥の地である滋賀で開催された意義について書きます。
正直に言えば、僕自身、滋賀県が「近代砂防発祥の地」とされていることを、今回の集いを通じて初めて深く知りました。琵琶湖や水害、治水についてはこれまでも関心を持ってきましたが、山から流れ出る土砂と向き合ってきた滋賀の歴史については、まだまだ知らないことが多かったと感じています。
開会式典では、主催者や来賓の皆さまから、気候変動に伴う集中豪雨の増加や、土砂災害の頻発化・激甚化を踏まえた防災・減災対策の重要性についてお話がありました。また、土砂災害防止功労者表彰も行われ、長年にわたり土砂災害防止に尽力されてきた個人や団体の皆さまの功績に、会場全体で敬意を表する時間となりました。




今回学んだ中でも特に印象に残ったのが、滋賀と砂防の深い関係です。田上山をはじめとする地域では、長い歴史の中で山の荒廃や土砂流出と向き合ってきました。滋賀は琵琶湖の県であると同時に、山から川へ、川から湖へと流れる砂と向き合ってきた県でもあります。
かつて山が荒れ、雨のたびに大量の砂が流れ出すと、その砂は川に堆積し、天井川を形づくっていきました。つまり土砂は、単に山の中だけの問題ではなく、滋賀の地形や暮らしそのものに大きな影響を与えてきた存在でもあります。
そうした課題に対して、先人たちは山腹工や砂防堰堤などの技術を積み重ね、地域の安全を守ろうとしてきました。田上山砂防150年という歴史は、単なる過去の土木事業の記録ではなく、滋賀の暮らしを守ってきた防災の歩みそのものだと感じます。
一方で、今の土砂災害は、過去と同じ形ではありません。気候変動の影響により、集中豪雨や短時間強雨が増え、全国各地で土砂災害が頻発化・激甚化しています。滋賀県内でも、伊吹山においてシカの食害などによる植生の衰退や裸地化が進み、令和6年7月には土砂流出により山麓の集落に被害が発生しました。
かつての山林荒廃は、人の伐採や木材利用などによる「人為的な裸地化」が大きな要因でした。しかし現在は、気候変動、シカの食害、少雪、集中豪雨、さらには林野火災など、土砂災害の要因そのものが複雑化しています。そのため、今回の全国の集いは、滋賀が歩んできた砂防の歴史を振り返るだけでなく、これからの時代に必要な防災・減災のあり方を考える場でもありました。
砂防と聞くと、砂防堰堤などの施設整備を思い浮かべる方も多いと思います。もちろん、ハード対策は命と暮らしを守るために欠かせません。ただし、それだけで十分とは言えません。危険箇所を知ること、避難情報を正しく受け取ること、地域で声をかけ合うこと、そして子どもたちに地域の災害の歴史を伝えていくことも、防災・減災には欠かせないものです。
防災は、災害が起きた後の対応だけではありません。山の状態を知り、川の流れを知り、地域の歴史を知り、そのうえで住民の避難につなげていく。そこまで含めて考える必要があります。
滋賀には、近代砂防発祥の地としての歴史があります。その歴史は、全国に誇るべき財産であると同時に、気候変動時代の新たな災害リスクにどう向き合うのかを問いかけるものでもあります。今回の集いに参加し、土砂災害対策は、過去の経験、現在の技術、地域のつながり、そして未来への備えを重ね合わせて考えるべきものだと改めて感じました。
次回は、特別講演で特に印象に残った「森林があれば土砂災害を防げるのか」というテーマについて書きたいと思います。
野田たけひろ
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