Blog活動日誌

2025年12月25日 県外調査 「選ばれる理由」を問い続ける酪農経営

こんにちは。滋賀県議会議員の野田武宏です。

 

12月の視察3か所目では、株式会社オオヤブデイリーファームを訪れ、代表の大藪裕介さんから、酪農経営の変遷と、その背景にある考え方を伺いました。

大藪さんは2代目として牧場を継いでおられますが、現在の経営に至るまでの過程は、いわゆる「家業として自然に引き継いだ」というものではありませんでした。就農のきっかけが海外旅行への憧れだったという率直なお話や、大学在学中にお母さんが倒れ、家業を手伝いながら通学する生活に変わった経験など、自分の歴史と経営判断が強く結びついているように感じたことが印象的でした。

また、お母さんの回復後に訪れた他地域の酪農家で、社員やパートを雇い、仕事と生活のバランスを取りながら経営している姿を見たことが、「酪農の仕事の形は一つではない」と気づく契機になったと話をしてくれました。

一方で、経営環境の厳しさについても率直に語られました。

生乳生産調整が続く中で、酪農経営の収入が大きく圧迫され、月の手取りが5万〜7万円程度まで落ち込んだ時期に強い不安を感じた時期があったというお話は、酪農が構造的に不安定さを抱えている現実を感じる機会となりました。

 

父親が経営していた際に、近くの畑が知らないうちに売られていったことや、「このままでは別の仕事を考えなければならないかもしれない」という話をされた経験は、個人の努力だけではどうにもならない制度環境の問題を浮き彫りにしていると感じました。

そうした中で、大藪さんが突きつけられたのが、

「あなたの商品に、選ばれる理由はあるのか」

という問いだったそうです。

生乳は酪農家自身が直接販売できないため、「お客様に選ばれる」という発想そのものが、当時の酪農家にとって新鮮であり、強い衝撃だったとのことでした。

 

 

オオヤブデイリーファームさんは、熊本県内でも早い段階で、生産だけでなく、加工や販売まで主体的に関わることで付加価値を高め、経営の安定を図る6次産業化に取り組んだ酪農家であり、当初はごく小規模な加工スペースからのスタートだったと伺いました。

牛乳そのものの販売に固執せず、加工・流通まで視野に入れた経営へと転換していった過程は、「必要とされる牧場」を目指す試行錯誤の積み重ねだったのだろうと感じました。

その取り組みは国内にとどまらず、ロサンゼルスの高級スーパー「Erewhon(エレウォン)」で、来年プレゼンテーションを予定しているというお話もありました。

また、国内では帝国ホテルのECサイトにおいて、ヨーグルトが昨年7位に入り、一時は2位まで順位を上げたという実績も紹介され、加工・販売に踏み出した判断が、確実に評価につながっていることがうかがえました。

 

また、牧場ではホルスタインやジャージーなど複数の牛を飼養し、酪農家として草を刈り続け、堆肥を畑に戻すという循環型の営みを続けておられます。熊本の酪農は、外から見ると見えにくいものの、長年にわたり地域の中で循環を回してきた産業であるという説明は、改めてその公共的な役割を考えさせられるものでした。

一方で、命の扱いをめぐる課題についても、率直なお話がありました。

乳用牛の雄子牛については、牝に比べて肥育や流通が難しく、取引価格が低くなりやすい傾向があることが、業界全体の構造的な問題として語られました。特にジャージー種については、体格や成長特性から流通が限られるという話もお聞きできました。

さらに、雌雄で体格におよそ3:2の差があり、雄は加工に向く特性があること、オメガ3を意識した飼料で肉として活用する試み(いわゆるオメガ3子牛)、そして役目を終えた母牛についても、再肥育して食肉として活用する取り組みについても説明を受けました。

これらの話は、「うんこからミルクまで作っている」という印象的な言葉の裏にある、命を途中で切り捨てないための模索なのだと感じました。

また、やむを得ず処理が必要となる場合には、法令に基づいた適正処理が求められ、1万円ほどの費用が発生するという現実についても説明を受けました。具体的な金額は地域や処理方法によって異なるため一概には言えませんが、命を扱う産業であるがゆえに、経済性だけでは割り切れない感情面を含めた負担を抱えていることが伝わってきました。

大藪さんは、事業を進める際に様々な補助金を活用したことから、自身を「補助金ハンター」と表現されていましたが、その言葉の裏には、補助金そのものではなく、行政の制度設計や関わり方次第で、事業の方向性や質が大きく左右されるという、経験に裏打ちされた重みを感じました。

 

 

株式会社オオヤブデイリーファームさんの取り組みは、単に加工品を作ることや売上を伸ばすことにとどまらず、酪農という産業の構造、命の扱い、そして働き方や生き方を一体として考え続けている点に特徴があります。

話の中で印象的だった「誰かのために、を突き詰めていければ、その人の翼になる」という言葉は、理念として掲げられているのではなく、厳しい現実と向き合いながら選び取られてきた経営判断の積み重ねの中に、確かに息づいているものだと感じました。

 

■株式会社オオヤブデイリーファーム

https://www.oyabudairyfarms.com/

 

滋賀県議会議員 野田たけひろ

ページの先頭へ